第2回 もうじき四月なのに

私がここ信濃町に移り住んで、今年の五月でまる二年。ここで冬を越すのは今年で二回目となる。一回目の冬は、積雪量がとても少なく、地元の人に言わせると、例年の三分の一程度とのことであった。そのため除雪作業はとても楽であった。

これがまあ、終の棲家か雪五尺

と小林一茶が詠んだ土地柄だけに、冬の厳しさはある程度覚悟していた。また、本当に寒いときは最低気温が氷点下二十度にも達すると脅かされた。そこで、防寒具を整え、懇意にしている大工さんから中古の除雪機を譲ってもらい、ストーブ用の薪をたっぷり備蓄し、越冬に備えて準備万端整えていた。ところが、いざ冬を迎えてみると、最低気温こそ氷点下二十度近くまで下がったが、雪については想像したほどの積雪量は無く拍子抜けした。一番多いときでも積雪量は五十センチメートル程であり、雪に埋もれた家を必死で掘り出すような事態を想定していたが、全くの杞憂であった。従って、例年二~三回は必要となる屋根の雪下ろしも、このときは一度もやらずに済んだ。

しかし、去年の冬に比べて今年の冬は雪が多い。大晦日から雪が降り続き、積雪量は一メートル近くにまで達した。一月半ばには専門業者に頼んで、屋根の雪下ろしをしてもらった。もっとも、その後は、雪は降るものの、暖かい日が続き、それ以上雪が降り積もることは無かった。また、気温は、年末に一度氷点下十五度という日があったが、その後は氷点下十度を下回ることは殆どなかった。

雪景色三月に入ると、暖かい日と寒い日が交互に訪れた。 ところが、暖かい日は初夏を思わせるような日があるかと思えば、寒い日は氷点下十度近くまで気温が下がり、連日雪が降るという状態である。三寒四温というには、寒暖の差が激しすぎるような気がする。この原稿は三月二九日に書いているが、昨日午後から降り始めた雪が、今日午前中までに十五センチメートル程も降り積り、更に降り続いている。まったくもうじき四月だというのに、いつまで雪が降るのだろうか。せっかく我が家の庭で咲き始めた雪割草の白い花も、この雪の下で寒さに震えているに違いない。

このように書くと、信濃町の冬は余程厳しい生活を強いられるとの印象をもたれるかもしれないが、暖かい日が多かったことから、最大一メートルはあった雪は殆ど消え、フキノトウが花を咲かせ、春は確実に来つつある。冬の厳しさといっても、暖冬のため嘗てのような厳しさは無く、かなり過ごし易くなっている。冬をすごすのも田舎暮らしの楽しみの一つなのだ。

(2010年)