第12回 信濃町の夏

信濃町の夏はとても爽やかで過ごしやすい。
五月の連休明け頃から九月いっぱい頃の間が、一年中で一番過ごしやすい時期だ。標高六百メートルを超えるこの地は、冷涼な気候で客商売の家は別にして、一般家庭で冷房機を備えるところは殆ど無い。我が家でも冷房機は無い。現在、七月二十六日十四時00分だが、室内温度は摂氏二十六度。薄曇りではあるが時々日が射し蝉時雨(せみしぐれ)が木立一杯に満ちている。かすかに吹く風は爽やかで、何とも心地が良い。
標高三五〇メートルの長野市まで行くと連日最高気温が三十度を超し真夏日が続いているが、信濃町は標高六五〇メートル程で、夏の盛りでも最高気温が三十度を超える日は多くない。天気予報によると信濃町の今日の最高気温は二七度とのことだ。

庭に出ると西方向に標高一九一七メートルの飯綱山の雄姿が見える。空気が澄んでいるためうす曇りにも拘わらず、山の稜線がくっきりとしており、いつ見ても感動的だ。特に雨上がりの飯綱山はことのほか美しい。標高一九〇四メートルの戸隠山は、天気が良いと綺麗に見えるのだが、今日は薄いもやの中に霞んでよく見えない。
但し、残念ながら地形の関係で我が家からは黒姫山は半分しか見えず、妙高山、斑尾山は全く見えない。このあたりでは、さきの飯綱山、戸隠山、黒姫山、妙高山、斑尾山の五山を北信五岳と親しみを持って呼んでいる。

旧古間小学校

旧古間小学校

野鳥も沢山訪れる。我が家の南側は、木造の旧古間小学校があり、その敷地の植え込みが、ちょうど借景となっている。そこに枝垂桜が一本あり、毎年地味ではあるが花を咲かせている。

この木に今年はアカゲラが穴を開けて営巣した。雛たちはもう巣立ってしまったが、少し前までは、アカゲラが「ケケケ」啼きながらしきりに餌を運んでいる姿が見られた。写真を撮ろうとしたが、遠くから撮ろうとすると画像が小さすぎてだめ。近づくとアカゲラは警戒して逃げてしまう。結局気に入った写真は撮れなかった。十日ほど前に雛が巣立ってのかアカゲラの姿は見えなくなった。また、六月には、庭のイチイの木に設置した巣箱にシジュウカラが営巣した。巣箱のそばによると雛がしきりに鳴いている声が聞こえた。この雛たちも暫くして巣立っていった。

野菊が咲き始めた

野菊が咲き始めた

野草は、ちょうど夏の花から秋の花に入れ替わる時期に当たり、咲いている花の種類は多くない。ようやく野菊が咲き始めたところだ。八月の半ば頃になるとあちこちで野菊が咲き乱れるであろう。野菊は白い小さな花だがとても可憐で私の好きな花の一つだ。近所に自生しているこの花を我が家の庭に移植して、毎年花が咲くのを楽しみにしている。この他、クサツフジ、紫陽花、ねむの木等が現在咲いている。

(荻原一正)