第9回 アファンの森見学

十月三十日(土)、「アファンの森」見学会に参加した。当日は台風が接近し朝方は雨模様で肌寒いあいにくな天気であったが、十時頃には雨も上がり、老若男女合わせて二十名程の参加者と共に森林再生を目の当たりに堪能してきた。

アファンの森は、英国生まれの作家であるC.W.ニコルが信濃町の黒姫山麓に森林を購入し手入れをしてきた森だ。

総面積約九万坪、現在は「(財)C.W.ニコル・アファンの森財団」が管理している。アファンの森という名は、C.W.ニコルが生まれた英国ウェールズにある「アファン・アルゴード森林公園」にちなんで名づけたとのこと。 一九八六年頃から山林の買取を開始し、間伐と下草刈をして、森に適した多種類の木を植林し、又野生動物が好む実のなる植物は残し、根気良く再生している森である。又二〇〇八年十月には英国のチャールズ皇太子が視察したことでも知られている。

(荻原一正)

アファンの森アファンの森の中は散策道が縦横に整備されており、財団の職員(学芸員?)と管理人のおじさんが案内してくれた。管理人のおじさんは地元の人で、地元の言葉で説明してくれるのだが、これがまた名調子で聞いている者を飽きさせない。説明の中で「毒キノコの確実な見分け方」というのを教えてくれた。それによると、キノコを細かく刻んで肉か魚に混ぜて犬か猫に食べさせてみるとよいとのこと。これではもし毒キノコだった場合犬や猫がかわいそうと思う人は、隣の家の人に食べさせてみるとよいとのこと(笑)。
そこで落語を思い出した。昔から「ふぐは食いたし、命は惜しや」というが、ふぐを料理したが、どうも怖くて食べられない人がいた。そこで近くの橋の下に住み着いている乞食(こじき)に食べさせてみて何ともなかったら自分達も食べようと、彼らに分け与えた。暫くして乞食が何事もなくぴんぴんしているので、これは大丈夫と自分達も一杯飲みながら食べていると、そこへ乞食が来て「あんた達何ともねえかい、じゃ、おら達も食うべえか・・・」という話である。

又、熊と遭遇したときは、熊に背中を向けて一目散に逃げるのが最良の方法であると教えてくれた。熊は時速五十キロで走るといわれるが、熊に追いつかれたことはないといっていた。テレビで専門家が、熊の目を見ながらゆっくり後ずさりするのが良いと言っているが、それでは熊にやられてしまうそうだ。

そんなこんなで、管理人のおじさんから、森の植生、下草を刈って新たに植林する部分と自然のままで残す部分とを使い分けること、苔の生え方による南北の見分け方、木の種類別の特徴等、森に関する様々な事柄を教えてもらい、予定していた二時間は瞬く間に過ぎた。
見学が終わった後、管理人のおじさんが作ったおでんを皆で御馳走になり帰路に着いた。おでんは良く煮込んでありとても美味しく、冷えた体に暖かさが沁みた。

アファンの森は一度見たいと思っていたが、年に一度この時期に一般開放され、ようやくそれが実現できた。私が当初想像していたより森は雑然としていた。きれいに下草を刈り、間伐し、整然とした森に秋の陽が射している情景とは違っていた。森はある程度自然のままに任せるのが良いようだ。こうした森の再生活動は、荒れてゆく日本の森にとって欠かせない活動であり、アファンの森がさらに広がることを願っている。 タグ: